国土調査に基づく地籍図を法17条に指定することについて


日本土地家屋調査士連合会
研究室第4部門
研究員 久 米 充 彦

1.実施の実態

 国土調査によって作成された地籍図が法務局に備え付けられてから久しくなるが、法による
実施である以上全国的に見ても大きな差異はないものと考えていたが、研究員各位の話を聞
くにつれて地域的に大きな差異があると思われた。特に「境界査定後の現地性の部分で境界
杭の埋設の有無に大きな差異」。「本事業成果を利用する側に国土調査法に対する理解度の
差異」があると思われる。




2.福島県における過去の国土調査の実態

 福島県が国土調査を実施したのは法施行当時と聞くが、当時は法に対する理解度がなく、
今日の法17条地図として利用すること、地図が不動産取引に重要な役割をもつこと等の想定
意識に欠けて実施されたきらいがある。




3.福島地方法務局が国土調査成果図を法17条地図に指定している実態

 福島地方法務局は国土調査成果図を積極的に法17条地図に指定していると思われる。
 このことは大いに結構なことであり、国民へのサービスという観点からも望ましいことと思わ
れる。
 しかしながら法17条地図に指定する為、多角的な判断基準をもって指定すべきであるの
に、残念ながら精度的な基準等があるようには思えない。
 具体的に言えば、いやしくも地図として認証し国民に交付している以上、地図の精度もある
程度保証する姿勢がほしいのではないか。

 当然国民は潜在的にその程度の精度を期待しているはずである。また、現地復元性の期待
出来るものであるべきである。これらの基準なしに無闇に法17条地図として指定したため、後
述の地区のごときは、法17条地図であるが故に、我々のみならず国民、地方公共団体、多方
面への影響は大きい。




4.法17条地図を活用している現状

 我々が現在の国土調査成果図を法17条地図地区の境界査定の資料として利用する限り、
現地復元性がなければただのAK紙でありフイルムであり、さらに現地が成果図と相違すると
いう事態では、土地家屋調査士にとっては却ってやっかいな存在に過ぎなくなる。
 しかも、無秩序に法17条地図に指定する法務局、国土調査を実施した地方公共団体が一
方では図根点を設置し、一方では舗装工事等で破壊して行くという一貫性のなさのなか、辛う
じて存在している図根点、多角点等を捜し出して依頼者の負託に応えている。




5. 国土調査成果図の分解能の問題

 国土調査成果図が数値式になる以前の成果図に大きな欠陥があると言われているが、私の
知る限り数値式以前の国土調査であっても図根三角測量、多角測量にあっては今日の精度と
何ら変わりはないと考えられるし、多角点を利用して行われた平板測量も精度的に遜色が無
い。
 図解法成果図の結線ミスがないとは言い切れないが、確率からしても、微小である。
 極端な地域は例外であり、国土調査成果図の精度は全体的に高いものと評価できる。
 ただ、いまここで確実に言えることは、昭和55年以前の国土調査実施区域では成果図の現
地復元性に欠けることである。
 境界査定をしていながら、現地に境界標を設置していないという欠陥がある。ここに、我々土
地家屋調査士としての悩みがある。

 以上のような現状でさまざまな問題点を指摘出来る訳であるが、我々地土地家屋調査士側
に問題点はないか。土地家屋調査士が、声を大にして国土調査成果図を非難出来るだけの
分析、分解能力を持ち合わせているか。過去の国土調査が図解法であったことのみが重大欠
陥の要因になったと言い切れるか。法務局の無秩序指定を非難出来るか。このことを内省の
意味を込めて検討する必要があると思う。
 言い換えればこれらを理由に依頼者になにがしかの負担を間違ってかけてはいないかと言う
ことである。
 具体的に箇条にしてみれば

1.法17条地図に誤りがあることを知りながら、依頼者との金銭トラブル等を避けて法17条地
図を無視して地積測量図を作成した。しかも、法務局側も、審査能力に欠如していたため、疑
いがもたれる事なく登記となった例。

2.極端な場合、法17条地図上で図上分筆をし、現地の境界査定、境界標識埋設は全く行わ
れなかった例

3.国土調査成果図作製のプロセスをある程度理解しているが、図根点の 探査をせず、残存
の国土調査当時の境界標や、周辺地上現形物(擁壁角、 CB塀角等)のみを測量し、成果図
と照合して地積測量図を作製した例

 このような事例の起因は何であったのか考察すると、原因としてまず第一に挙げなければな
らないのは、国土調査そのものの理解が不足していたことである。
 つまり、我々土地家屋調査士が、国土調査成果図の現地復元の重要性を理解し、「まず境
界査定ありき」という基本的な事の作業を軽視したためである。
 また、国土調査作業工程の不理解から、完全な分解能力がなかったということである。極論
を言えば、我々土地家屋調査士も国土調査実施作業が出来る程度の能力がほしいということ
である。
 過去に法17条地図作製モデル作業を、国土調査作業工程に準拠して全国的に実施したの
であるから、土地家屋調査士が全く出来ないものではないはずである。




6.国土調査実施機関への提言

 国土調査実施機関は、法17条地図指定を前提として成果図の作製に取り組むべきである。
国土調査法の作業工程の解釈は普遍的でなければならないのであるから、地域によって境界
査定の方法に差異があるのはやむを得ないが、現地については境界標識を埋設するという作
業をして行くべきである。
 また、図根点、多角点の亡失を防止することを作業工程に確立して行くべきである。
図解法、数値法の選択に口を挟むつもりはないが、境界査定時に作製する素図の公開は少
なくも我々土地家屋調査士にはするべきである。
 このことは、とりもなおさず、国土調査成果図の精度の確保につながることではあるし、ひい
ては、固定資産税法の適性運用化に直結するし、法17条になることによって不動産取引適正
化、公共事業実施の円滑化になるのである。




7.法務局側への法17条地図指定基準の提言

 法務局が法17条地図として向後指定を積極的に行うことには異論はないが、少なくも具体
的指定基準姿勢を策定してから指定をすべきである。具体的には箇条にして述べる。

1.国土調査成果図の分析、分解能力を自ら持つこと。

2.現地の境界が復元性にして欠けていないことを確認出来る能力を持つこと。 

3.向後は数値法の成果図のみを指定すること。

4.過去に指定した法17条地図を見直し、法17条地図としてそぐわないものは、法17条地図
 指定の解除をすること。

5.実施機関へ図根点、多角点の重要性を啓蒙し、その亡失を防止する手だてを制度化させ
 ること。



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