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●FaXが無人の事務所に 12月30日の17時を過ぎた頃、無人の事務所に、例の「ピーヒョロロ」ととんびが鳴くような 音とともに、1通のFax原稿が届く。 山口会の渋瀬 清治氏からである。氏はいつも厳しい調子の原稿を寄稿してくれている。当 然、私はいない、女房の里に家族全員里帰り中である。 ● タイトルは「貴方へ届いた内容証明郵便」 拝啓、時下ますますご清祥のことと御慶び申し上げます。 さて、今般、私が受託した土地について事前調査しましたところ、隣接地を貴殿が測量してお られます。 貴殿作製名義の法務局備え付け地積測量図によりますと、分割点以外にも引照点が2点あ り、当方が参考のため、図根多角点より、分割点および引照点を観測し、貴殿のデータにより 今回、私が依頼を受けた隣接地との境界を復元いたしましたところ、境界においても地籍図と の著しい相違があり、更に貴殿依頼者の立会いはまだ得ておりませんが、私方依頼者の指示 による境界と著しく相違いたしました。 貴殿の測量時において、私方依頼人には、立会いの要請すら無く、境界確認の為の立会 い、何等かの境界を確定する為の行為については一切なかったとの事であります。 これらの事から、貴殿がなされた測量は、依頼地以外の隣接地を、貴殿の調査不足により、 取り込んで求積されている事は明白と思われます。 今回の私方依頼については、この境界の相違する位置については無関係であるため、本文 によるご忠告のみに留めますが。今後同様な事をされますと、何等かの法的処置を行なう所 存です。 また、私方依頼人の所有地においても、貴殿の測量の誤りによる境界の相違について、速 やかに貴殿に於いて処置される事を望みます。もし、この処理を怠たるならば、私方依頼人と 協力して貴殿の責任を徹底的に追求せざるを得ません。 以上お伝え、申し上げます。 ●わっ、なに、これっ 正月あけ、ひょこひょこと事務所の掃除にやって来たが、Faxの原稿台に、そのままになって いる原稿のタイトルを見た瞬間。 「わっ、なに、これっ。・・・ついに、来たか・・・。」 「どの仕事の分なのだろうか。」 頭の中で、自分の怪しげな仕事がくるくると廻りだし、ついには全部の仕事の『あら』が浮か んでくる。 我ながら、なんと立派な調査士なんだろう。情けなくなってくる。 落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かし、内容を読もうとしたら、Faxの最初に渋瀬事務所の 文字がある。 やれやれ一安心。渋瀬さん、人騒がせなタイトルはやめて。 ●会話 だが、身につまされる内容の原稿であり、少し激しすぎる。原稿寄稿者の山口の渋瀬氏に電 話。 「随分きつい調子の内容ですね。」 「いや、実はこちらで、この内容のような事を継続して行っている輩がいるんですよ。」 「へ〜っ。本当なんですか。それはまた何故。」 「恐らく、最初に教えてもらった調査士事務所が悪かったんでしょうね。本人はこれが当たり前 だと思っている様なんですよ。」 「どこにも、そんなのが居るんですね。それで年齢は。」 「私達と変らんですよ。いい年ですよ。」 「分別盛りですね。でも、私の方でも似たような例がありましたよ。」 ●どこにでもある話 先日、実際にこちらであった例を思い出す。 開業して間もない調査士A氏。 不動産業者からの仕事の依頼で、土地を造成、分譲のために、区画を整理し、中に介在す る水路についても、用途廃止をして後、彼が土地の払い下げ申請の図面として、調査士の職 印を押印して地積測量図の作製を行っている。 土地の払い下げも決定し、大蔵省からの承諾書と売り渡し証書も申請人に渡り、後は土地 の表示登記を行なうだけになったのだが、申請人には知人の調査士がおり、当然、表示登記 は知人に依頼した。 国土調査が完了している地域で造成を行い、土地の払い下げを行なったのだが、土地造成 を行なった区域の外側の水路は変更無く残っている。 だが、その水路の境界が用途廃止し、払い下げを行なった元水路の土地との境界でもある。 彼が土地の払い下げ申請の為に、大蔵省に提出した地積測量図に引照点の記載がある。 現地の境界には、復元した形跡も無く、不動標識を入れれる筈の水路との境界についても何 等、その形跡が無いというので、引照点から復元し確認してみる。 だが、これがとんでもない位置になってしまい、明らかに現実に残っている水路との境界とは 思えない場所にくる。 水路から後退した位置から傾斜を付けて造成されたコンクリート擁壁のてんばの辺りから、 まだ後退する位置になる。いくら管理巾があるかもしれないといってもこの差は有りすぎであ る。 A氏に電話をして事情を聞くと、どうせ、造成で無くなってしまうし、国土調査地区というので、 図面の読み取りをしただけで、現地で復元も何もしていなかったとの事。 全然境界が不明になり、新たに区画を作製する造成地の中については、当然彼の言ってい る事にも一理あるのだが、その変化のない外側と接する境界については、後々残るのだ。 きっちりと境界を確認していなければならない。 図面の読み取りだけによる復元など、もってのほか。 また、自分が引照点を設置して、座標を入れている以上、他の境界についても、当然だれも が、その引照点を使用して復元出来る、そして復元されてもいいのだと言う事を、自分の職責 として考えなければならない。 ●やっぱり内容証明郵便 どこの土地にも、似たような調査士がいるらしい。 始めに、業務のやり方を学んだ事務所の影響が大きく、『三つ子の魂百まで。』という事にな ってしまうらしい。 当然、試験合格をしたのみで、いきなり実務経験もない者が業務を行うとしたら、爆弾を抱え て動き回っている様なもので、どうなるのやら解らない。 渋瀬氏の原稿のような内容証明郵便で、的確に注意してもらう事もそれはそれでいいのかも しれない。 そうすると調査士に来る郵便物は内容証明ばっかり、と言う事にもなり兼ねない。 調査士業務の最初の学習が重要な事は言うまでもないが、既に自立してしまった調査士は どうすれば良いのだろうか。
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