登記所における表示登記の現状

(登記官の独り言 1)

地図訂正の相談

 登記所において、職員が一番苦労をしているものとして、地図に関する相談があげられる。

その内容としては、次のような相談が多く見受けられる。

(1)建物を建築しようとして、現地と地図が相違をするもの。

(2)土地を処分しようとしているが、調査したら現地と地図が相違するもの。

(3)銀行融資等の際に融資申込みをしたら、融資担当者から登記簿の謄本と地図の写しを提
出するように言われ、調査したら地図が相違するもの。

(4)地図の備付けがないもの。


 登記所の職員が一番苦労をするのは、自分とは縁もゆかりもない管轄の場合に、その地図
を見てもそこに含まれている問題点が見えてこないことが多い事である。やっと分かりかけた
頃には、転勤である。表示登記の充実を確実に行っていくためには、地元調査士さんとの情報
交換を行いながら処理をして行かないと、後日その処理に対して思いがけない苦情等が生じ
てくるこになる。

 現在登記所の統廃合が積極的に行われているが、勤務年数の長期化が図られることを期
待するものである。

 一例を上げれば、大字○○の一部は戦後に農地の交換分合が行われたものの、その登記
の嘱託が行われておらず、そのため地図と現地が相違しているものについて、内容が分から
ず通常の地図訂正の事例と簡単に考え、その地図訂正の相談にあれこれ考え、処理方法を
安易に行うと大火傷をすることもある。

 また、一部町においては、国調を昭和30年代前半に行ったものの、調査前と比較して地積
が増えるため、議会で調査結果を登記所に持ち込むことを反対する議決を行い、現在までそ
のままとなっているところがある。

 申請人から、登記所の地図は町保管の地図と違うため、地図を訂正して同じものにしてくれ
との申出もあるが、これは登記所の守備範囲を越えており、どうしようもないのである。



登記所の過去の地図に対する処理

 松山局においては、昭和47年〜49年当時は、いわゆる「列島改造」による登記事件の急増
の時期で、それに伴う公共事業の拡大に伴い、表示に関する登記の急増を招き、その事務処
理に苦慮した時代である。

 その一方策として、公図については、その根拠法令である「土地台帳法」が廃止されている
ため、不動産登記法第17条地図を備えつけるまでの一時的使用であり、測量図が提出され
れば、その測量図を集合させる事により最終的に法17条地図が備えつけられるとの認識もあ
り、地図に分筆線等の記載が難しいものについては、その地図の余白部分に(○○−1・−2
に分筆)と記載しても良い。との指導がなされたため、事務処理の簡便を図り、全ての分筆線
の記入をその方法により処理していたものである。

 もっとも、書類調査の段階で地図と提出測量図との照合・対査を行っていたとは言えない時
代であり、かつ「分筆地形図」の協力提出も行われてなく、土・日の宿日直の際に、1〜2ケ月
分をまとめてその処理をしていた状況であり、今思えばひどい事務処理であった。

 特に、嘱託登記については、その市町村長・知事が責任を取るのだから、書類調査をする必
要はなく、処理を早くすることが肝要であると言われ、無審査に近い状態で処理をした事は認
めざるを得ない。

 そのため、現在その土地(隣地を含む)の登記の際に、測量図訂正を絡ませないと事務処理
できない事案が多く、調査士さんから当時の審査方法が現在の登記処理に与える代償の大き
さから、当時の処理方法についての不満を言われるのは当然の事であろう。

 それゆえ現在の嘱託登記についても将来、同様な結果とならない様に一般事件と同様に、
厳正な処理を要求されている事を、登記所としても心しなければならない。


 また、調査士サイドにおいても、土地の調査の際に、地図の閲覧をすることなく(一部の登記
所においては、閲覧をさせていなかった)現地においても、依頼者の一方的な境界調査・確認
により測量していたようである。また特定の一部の調査士は、現場を承知している場合等に
は、現地調査を省略して測量図を作製していると噂では耳にしていたが、現実の相談の際に、
その調査士の名前を聞くとそれが現実であった事を知り、残念に思うことがある。

 調査士さんの作成による地積測量図は永久保存であり、その責任により作成されている事
は、改めて取り上げる必要はないであろうが、現在の状況が将来も続くとは限らず、今以上に
厳しい状況となり、現在の状況で作成された地積測量図と作成時の環境(立会等の信用性)
が将来、より厳しい状況下で責任を問われる事も心しておいてほしい。



地図整備作業の実施

 上記のように、地図に対する登記所の認識が不足していたため、その是正方法として平成
元年から、法務省においては、公共嘱託登記土地家屋調査士協会の協力を得て地図整備作
業を開始しているが、その修正内容には、筆界線の記入もれ・地番の誤記が多く見受けられ、
その修正率についても、修正必要にもかかわらず、資料の不足・そごにより、修正未了のもの
が多く残ってしまう現状である。

 しかも、その作業の職員には、多くの負担がかかるため、協力的でないとの批判もあることも
事実である。


 また、その作業に従事する調査士さんも、自分の業務との兼ね合いから、どうしても雨天の
日は多く携わる事になり、登記所内での作業スペースの確保ができない時もしばしばである。


 地図整備作業については、より積極的に対応することが、その後の地図の相談(訂正事件を
含む)の減少につながる事を、登記所の職員はもっと認識をする必要がある。


 訂正の内容については、測量図の保管が登記簿と土地台帳との一元化指定日以降であり、
前述の申告書の写し(市町村保管)が少なく、訂正未了事件の増加となっている現状であり、
また、その訂正内容については、表示担当登記官との協議を行うことにより、より積極的に筆
界線の記入を行うべきであると考えている。


※地図整備が完了した登記所に勤務した際、そのデータをもとに、地図索引簿を作製しようと
して、公嘱調査士協会の役員に提出を求めたところ。

 「データについては、フロッピーで登記所に提出をしたが、首席の指導でそのフロッピーを金
槌で全部廃棄処分にしたため、そんな物は無い。」と言われ唖然とした経験がある。折角多大
な経費を掛けたものの、そのデータが利用出来ないという、非常に勿体無い思いと、担当職員
の認識の無さに情けない思いをしたことがある。

 現在は、その登記所にデータ保存をお願いしているが、全国の作業庁はどうなっているのだ
ろうか?。



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