整備不良

(原因とチェック)

●観測

 GPS観測により2級基準点をW氏の地元に作製。
折角、精度の良い基準点が出来たので、そのGPSで作製した2級基準点の一部を使用し、W
氏の所属する公嘱協会の支所の会員達の実務研修を兼ねて3級?基準点を作製するという
話になり、厳密網計算のパソコンでの解析の手伝いのため、その研修会場に向かった。
 朝9時、研修の現場に到着すると。既に観測は開始されていた。
 各人に責任分担となる観測点を割り振り、各々が自分で手薄づけ、観測行う。
 再測を繰り返しながら、なんとか午前11時前には観測を終了。
 研修会場として借りている地元の公民館で、手薄等のチェック。
  「後視方向の見聞違い。」
  「水平距離で観測。」
  「3方向なのに2方向のみの観測をした。」
 等々、いろいろ誤り。見落としが続出。その度に再度。現地に観測に向かう。おかげで13時
過ぎには、すべての観測のデータが揃った。
 そのデータを使用して、電卓を叩きながら、記簿を作成していく。私も、皆のまわりをまわりな
がら水平角と球面距離を写しとり、厳密水平網計算のパソコン入力の準備を進める。



●比較

 そんな準備も一区切りつき、パソコンに入力しているのを待つ間、先週GPSで作製した2級基
準点とトータルステイションとの観測との比較を行うために、GPSで観測した2級基準点のうち
直接視通の聞く地点について、距離を観測してどの程度の差が出るのかチェックをしてみよう
という事になった。
 研修現場付近では4つの組み合わせが直接視通可能であったため、それらをすべて光波測
距儀により観測を行い、その結果の計算を行った。
 4つの組み合わせのうち3つまでは、その直接の距離の測定により得られた答えと、距離、比
高さとも5ミリ程度で納まった。
 だが、1つの組み合わせのみがおかしい。実際に測定したものとの差が距離も比高も5セン
チほど相違する。
 ひよつとしてGPS観測がおかしいのかもしれないと思いつつ、3級基準点班の腕が未熟なせ
いなのではとという事になり、3級基準点班は再度、2級基準点同士の距離について再度観測
を行うために現地に向かう。
 30分後彼らは帰って来たが、口が重い。
 3級基準点班の観測が相違していたのだろうか。
 「観測結果はさっきと同じで間違いありません。」
 この2級基準点は前週の金、土曜にGPS観測により我々がを観測したものだった。
 私の顔から血の気がひくのが解る。その組み合わせの片方は私が観測した場所なのだ。
 観測が間違った筈はない。
 確かにパラペットの上で器械が据付けにくい場所で在ったことは間違いがない。
 求心も確かに行ったし、水平も何回も確認して間違っていない、アンテナ高についても再三
観測し、トータルの高さと三脚や整準台、アンテナ高さを個別にたしたものとの総和は1ミリ程
度の誤差しかなかった。
 きっと間違っていない。いや間違えなかった筈だ。



●無駄話

 一週間前の金曜日。与点となる山頂にある三角点は翌日観測する事になっているが、翌日
は早朝5時30分から5セッションの観測が予定されている。
 翌日を少しでも楽な観測にするために今日頑張って観測しよう。
 3セッションくらい終了させてしまおう。
 そんな事情があっての夕方からの観測であった。
 夕方6時からの観測開始であり、3セッションをその日に観測するため、午後10時くらいまで
観測が続く事になり、最初から夜間の観測という事で、平坦地の交通量の少ない地点で、しか
も重複基線となる場所を選んでの観測であった。
 各人観測の場所は人家に近かったり、人っ子一人いない橋の横だったりする。
 かくいう私も後半の2セッションについては人家から20メートル程度離れた、4メートル道路と
1メートルの水路の間のコンクリート橋横に設置された基準点での観測であった。今回は夜間
という事もあり、道案内を地元の方が引き受けてくれている。受信機を設置し電源を入れた後
は何もする事がなく、無駄話に花が咲く、ついつい静かな場所で賑やかになり、近所の方も何
事だろうと覗きにくる。
 どの観測点でもそのようであったらしい。夜9時過ぎに懐中電灯をもって、変な機械を据付
け、あやしげな大人二人がなにやら喋っているり「UFOの襲来だろうか、それとも家の娘に目を
つけた痴漢だろうか。」と疑ぐられても仕方が無い。



●悪事はばれる

 翌日は早朝5時30分からの観測で午後3時まで只ひたすら、観測するだけの5セッション耐久
観測となった。
 だが、一人〈一組)だけ違っていた観測班がいたらしい。
 観測場所は2本の川にまたがってかかっている橋、その橋の中間に両方の川を仕切るように
護岸が走っている。その護岸に降りるために橋から3段程の階段になっている。その位置に基
準点を設置し、そこが観測地点であったのだが、この地点を観測したT氏と道案内のG氏つい
つい暇にまかせて酒を飲んでいたらしい。
 丁度この橋は主要県道にある橋とあって結構交通量がある。彼らは当然橋の上に車は駐車
しておらず、通行の邪魔にならない位置に止めていたらしいのだが、橋の真ん中で変な機械と
一緒の二人が酒を飲んでいる。
 当然パトカーは不審に思って停車する。幸いにも職務質問はされなかったようだが、200メー
トル程移動したところで検問がはじまり。観測終了後、その検問の方向と反対側を逃げて帰る
という強者がいたらしい。
 どうもこの位置が私の観測点と対をなしている問題の観測点であった。本日の研修にも参加
しているT氏「あっ、俺だろうか。酒飲んでしまったから、ちがっとるかもしれん。」

   やはり身にやましい事があると、何かが起こる。



●整備不良

 この強者、今回のGPSにおいて、GPS受信機を載せる整準台を持って来ていたのだが、どう
も求心が180度回転すると大分ずれるとこぼしながら観測していた。
 そういう私も整準台の気泡管がおかしい、気泡管を合わせて、念のため180度回転させて気
泡を確認するとずれてしまっていた。
 「みんな整備不良の器械ばっかり持って来て、各自で調整出来るのにやらないんですか。」と
地元の基準点測量に詳しい補助者に、ずばり言われてしまった。
 精密な器械ほど、単純に基礎に戻っていく。整備された器械。きっちりとした三脚の据付け。
的確な位置への器械の据付け。そして水平に設置された器械これら本当に基礎的な物事が
器械の精密さを充分に引き出す。

 だが今回はこんな事ばっかり。



●基線解析

 ひょっとして前週のGPS観測自体も再測する必要があるのではないだろうか。
不安が頭をよぎる。
 「ちょっと待って、GPS観測のデータを持って来ているから確認してみます。」
 W氏パソコンを操作し始める、「データはおかしくないようですよ。」
 ずっと、データを調べていたが、前回の観測の後、彼の家でダウンロードして
まる1日かけて計算をしたのだが、その計算のやり方がどうも悪かったようだ。
 GPSの計算はすべて彼に任せっきりにしている我々にとっては全く何が原因か不明である。
 やがて、彼の「ああっ、これか」という声が上がる「どうも基線解析を行った時に多角形のまま
基線解析を行った性のようです。観測計画では同一セッションを多角形で計画しても良いけれ
ど、計算については多角形ではなく三角形でやれ
 という事のようです、だから弱い図形のところに一気に歪みがきたみたいですね。
  今日ゆっくり計算し直してみます。」
 午後19時。一応3級基準点の計算も終了し、標準偏差2.7秒という非常に良い精度となり、
今回の研修は終了した。



●原因

 翌朝、彼から電話で基線解析の計算をやり直した結果、直接光波測距儀で観測した値とす
べて5ミリまでの値に納まったとの報告を受ける。
 「与点が2つのグループに別れた形になっているんです、そのグループの間に丁度10センチ
程度の溝が空いているようになっているんです。その歪みがあの位置に来たみたいなんです
よ。ただ、与点も許容誤差の範囲に入っていますので間違いでは有りません。仮にGPSで作製
した2級基準点の値を前回のまま使用しても800メートル近い距離で5センチ程度の差ですか
ら、100メートルで6ミリですから、これも充分許容誤差の中には入ります。今まではこの値であ
れば精度がいいといって飛ばしていた問題ですが、これからは与点の中でもいいものと悪いも
のの選別とか三等三角点以上しか使用しないという風な事になるでしょうね。」
 「これは今後の問題だろうね。」
 「今までの既製の三角点を使用している間は同じ様な問題は起きるでしょうね。
いつかはがらっと変わるかもしれませんね。」
 現実に与点一点を固定する仮定網平均と与点すべてを固定する実用網平均で差が生じてい
る事は事実であり、今後これらの事は国土地理院が解決してくれるであろう.
 与点についても現在の三角点から電子基準点等に年度を区切って変更されるかもしれな
い。



たそがれ調査士達のGPS奮戦記
     
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