高岡町基準点設置作業 4 ( 話題 ・ いろいろ ) 高岡地区で図根多角点の選点をしている時、地域の方といろいろと話をさせていただきました。 作業服に安全ベルトをした十人近くか一塊になり、ゾロゾロと自分の町を歩き回っているのだから 一体何が起こるのか、何をされるのか不安だったと思います。 住民の方は、頻繁に話しかけてこられ、我々は丁寧に対応したつもりです。 しかし、立場上お答えの出来なかった事や、気をつけて対応したつもりでも説明の不十分な 事や不快な印象を与えた事もあったかもしれない。 それでも、揉め事が無かった事が一番です。 呪いじゃ 作業中T永さんが住民の方から「何をやっているんですか。」と一番聞かれている。 若いし、質問しやすい雰囲気があるのだろう。 T永さんも実家のある場所ということもあり、丁寧に答えている。 そんな受け答えに慣れたころ、とんでもないことが・・・。 白髪のおばあさんが、何か聞きたそうにじっとこちらを見ている。 おばあさんの家から30mほど行き過ぎたが、まだ見ている。 我々より少し遅れて歩いていたT永さん、気を利かして説明する。 最初はおばあさんにニコヤカに話しかけていたのだが、しばらくすると顔はおばあさんを 見て話しているのが、腰は引け、足はこちらの方向を向いている。 とうとうおばあさんの勢いに負け、後ずさりをはじめた。 おばあさんはそれでもT永さんに話しかけている。 おばあさんの白髪は、のりで貼り付けたように直線に左右に地面に向かって伸びている。 異様な雰囲気が・・。 「毎年、相手がはみ出さないかと道路幅を確認しとるんじゃ。」 おばあさんの声が我々にも聞こえてくる。 T永さんが我々と合流したところで、やっとおばあさんは諦めたように引き上げていった。 どうやら、道路後退の関係で道路を挟む反対側の土地所有者と揉めているようだ。 土地開発で、家がどんどん建ち、先に家を建てた者と後で家を建てた者では、周囲の状況 により道路後退の条件も相違してくる。 道路後退をすることにより本来の土地境界が不明となる。 その結果、いずれの位置まで道路後退しなければならないのか悪循環になり揉めている ようだ。 T永さん「名前も聞かれました、呪ってやるって言われました。」と少し青ざめている。 意を決したように「荻やん、名刺持ってないですか。おばあさんに渡しに行って来ます。」 荻やん「いや、いや、T永さんにお任せします。私には荷が重い。」 誰ともなく「皆で私はT永です言うけん。この場所は、皆でT永の腕章つけて仕事しょうわい」 「そんなーっ。」 T永さん、ますます青くなる。 案内文書 選点を進めていくと、コンクリート杭に「私道」の刻印の入った標識があり、そこから舗装のない 土のままの道路(進入路)が続く。 ぞろぞろと、視通を確認しながら図根多角点の位置を決めていると 「何、しょんぞな。」と二人の男性が出てくる。 「地図を作るために基準になる点をどこにするか調査しているんです。」 「地図いうて、どこの地図をつくるの。」 「今度、このあたりの地図を法務局が作る事になりまして・・。」 「ほうかな、道路後退じゃ言われても、道路の中には境界があるけど、それがどこか解らん ようになっとんじゃわい。」 「そうですか。」 「ここの道路の入り口の土地は、相続人が16人もいて相続出来んのよ。ましてや、出口の 無い道路じゃけん市の担当者には市道にできないと言われトンじゃ。それで市も舗装も してくれんのよ。」 「そうですか。今回の地図で土地の地番とか、位置もはっきりしますから。ある程度の事は 解決出来るんじゃないでしょうか。」 「市道には出来ないんじゃろ。」 「通り抜けの出来ない、袋小路になっている道路ですからね。どうかな、うーん。・・・。」 と荻やん。 横から70歳くらいのおばちゃんが 「国土調査したら、土地が無いようになったぜ。郷里の島で国土調査をするとの事で帰ったら 自分の家の敷地の半分が人の土地にされていたぜ。ここもそうなるのと違うの。」 いつの間にか、ご近所の方々に取り囲まれている。 「それは、境界の立会いもきちんとしますのでご心配はいらないと思います。境界を測り直して 正確な形状と面積が出ますし、後日、境界が解らなくなっても復元することが出来る地図に なりますので。」 再び、おじさん 「そうかな。それはええ事で、わしらにとっても願ってもないことやけど、何で肝心の法務局か ら文書で説明が無いんぞな。わしら誰もその事知らんで。」 「はぁっ。」 「あんたら下請けじゃけん。あんたらに言っても仕方ないわいな。」 荻やん、老眼おっさん口を揃えて「すいません。」 自転車おばさん 作業も終わりかけようとする頃、小学校近くの田んぼの中の道路を歩いていると、自転車に 乗ったおばさんが我々を追い越していく。 「こんにちは。」と挨拶すると。 この自転車に乗ったおばさん、何か思いついたように引き返して来る。 「何、やっているんですか。道路工事が始まるんですか。」 「地図をつくるための準備作業をしてます。一つ一つの境界を測るための基準になる点を 作っているところです。」 「境界をはっきりしてもらえるんですか。」 「境界については、隣接の土地所有者のお立会いをしてからということになります。」 「相手も来るんですか。」 「そうですね。また、詳しい事は法務局から通知があると思います。」 「立会いがあるんですね。」 「はい。」 どうやら、周りの土地については土地の開発のため境界を決定して、造成され宅地と なっている。 それらの土地には境界標識も設置されているが、自分の土地は農地のままで、昔からの 自己所有地とあり土地の境界については境界標識が無く、現況道路は自分の土地の一部を 提供して拡幅している。 道路との境界も明確でない状態で、現況道路幅は3mであることから、建物を建築するため には道路後退が必要となる。 現在の状況では本来の境界に関係無く、道路後退線を境界とされるのではと不安に思って おられる様だ。 道路後退線を境界にされても良いが、昔からの境界で暮らしているのに、事情を知らない 後から来た人たちに道路拡幅に協力しないと悪口を言われるのが堪らないらしい。 その後、自転車に乗ったおばさんに我々は会う度に 「境界を確認する立会いはあるんでしょうね。」と確認されることになる。 井戸端会議 おばさん二人がお互いの自宅の庭から一段下がった里道で井戸端会議の真最中、里道に ある図根多角点の観測の為、おばさん二人の真横にミニプリズムを据え付けに行く。 おばさん二人から逃げられるはずも無い。 「ちょっとあんた。何しょん。」 「地図の為の基準になる点を測量しているんです。」 「地図いうて、新しく地図が出来るん。」 「はい、きちんとした地図が出来ます。」 「そうかな。この辺りは何も無かったところで、全然変わってしまったから地図もわからんよう にならいな。」 「そうですか。」 「ほうよ。私らが来た時は、このあたり全部田んぼじゃけん。」 60代後半に見えるおばさん達、結婚後この土地に移られたようで40年くらい前の事のようだ 周辺はすべて建物が建っている。 「全部、田んぼだったんですか。」 「かえるの鳴き声がうるさくていかんかったんじゃわい。」 「それじゃあ、蛇もたくさんいたんでしょうね。」 老眼おっさんも井戸端会議に正式に参加してしまった。 いつの間にか観測は終了していた。 |