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●調査士の測量? 「調査士には調査士の測量の仕方がある。」 「測量会社みたいな測量は、大規模な測量の時だけやればいいので、我々は一筆地だけの 測量だから、そんな事はやる必要が無い。」 「調査士は調査が命だから、測量は大概の事でいいのさ。」 少し言い換えると、殆ど基準点測量の知識を持たずとも、測量器材を使用出来て50メートル 範囲程度の面積を測れる事を測量だと思っている。 測るための基礎となる各種の測量の理論と技術については必要では無いと思っているのでは ないでしようか。 いや、煩わしいので調査士の測量には不要であるとして、そこから逃げようとしているのかもし れません。 これは私自身も、つい最近までそう思っておりました、ここで正直に告白しておきます。 いかに調査が命(これは全く否定いたしませんが)とは言っても、折角調査した結果をどうやっ て表し、後々に間違いなく伝えるのでしょうか。 当然境界には不動標識を入れる事になるのですが、不動標識さえその境界の位置にきっちり はいっていれば良い、地積測量図に表示した位置とは違って良いのだと思われる方は現在の 調査士とは言えないでしょう。 不動標識が現地に残り、地積測量図が法務局に残り、いざという時は両方がきっちり一致す る。安心。専門家に頼んでおいてよかった。これが専門家の仕事です。 現場の不動標識は毀損して亡失するかもしれません。その時の為にも地積測量図を基に復元 が出来るようにしておかなければなりません。 現地を測り、調査士が責任を持って作成し、職印を押印した地積測量図で復元出来なければ 我々の存在価値はなくなるといっても過言ではないと思います。 復元の方法として、一番簡単な方法は準拠点方式ですが、これとても現地の周辺全体が造成 等により変動すれば、たちまち使用出来なくなります。 ●違 い どのようにすれば一番良いと思われますか。いろいろ考え実践されていると思いますが、私自 身がどうやっているかお話したいと思います。 たまたま、私は国土調査地区での業務が主体ですので、公図地区の業務はあまり存じており ません。生半可な知識でお話をすると失礼ですので、国土調査地区での話をしたいと思いま す。 今まで、閉合や結合トラバース、最悪でも開放トラバースを行ないながら1筆地を測量されてい たと思います。まさか、そんな測量知らないという方はいらっしゃらないでしょう。 国土調査地域であれば、依頼地の近傍の図根多角点を調査して、国土調査時と同じ図根多 角点から測量をするというのが原則です。 しかし、古い国土調査実施地域であれば、この図根多角点は余り残っておらず、かなり広い範 囲を調査しなければ図根多角点が残っていないという状況です。 当然、図根多角点は1点だけでは、何の役にも立たない事は皆様ご存知のとおりで、最低2 個、普通は4個必要になります。 この図根多角点を使用して、結合トラバースなりを行って、依頼地を測れる新点を作成し、そこ から境界を測り国土調査時の結果との対比を行います。 私の地区では、図根多角点を調査する手間が非常にかかるため、図根三角点から新点を作 る測量を実施しております。これを実行してみますと、時間的には図根多角点を調査し3個以 上探すのと、図根三角点を探し、結合トラバース測量なりを行っても2日で終了しますので、ほ とんど同一と言って良いと思います。なお且つ、自分の測量のやりやすい場所や半永久的な 構造物に選点する事が出来、後々非常に利用がしやすいと言えます。 ●先行投資 それでも「依頼のあった1筆地のためだけに図根三角点からトラバース測量をされるのです か。費用はすごい金額になってしまうでしょう。」 当然こう言われると思います。だが調査士は測量会社と違って、その地域に密着しながら業 務を行ってこそ、土地の調査のために必要な慣習も知る事が出来ます。この一件のためと思 わず、将来の分筆依頼のための先行投資だと考えれば、そのトラバース測量の2点分のみを 依頼人に負担していただき、後続の依頼人にも2点分の負担をしていただくようにすれば、そ の費用は容易に回収出来ますし、恐らく最終的にはその図根三角点同士を利用したトラバー ス測量の費用の何倍かの金額は回収出来ると思います。 図根三角点からのトラバース測量の経験の無い方でも、過去に仕事をした現場について、も し、この図根三角点同士のトラバース測量をしていれば、恐らくこの位置とこの位置にトラバー ス点を入れていたはずだ、だから2、3点分は回収出来たと思われるのではないでしょうか。 何よりも自分が図根三角点から測量したトラバース点が近所にあれば、迷う事なくそのトラバ ース点を使用するでしょう。当然、新旧トラバース同士の一致度、現地適合性チェックの為図 根多角点を探す手間も遥かに少なくなるのです。 ●後悔 ただ、皆さんにこう言いながら、今私は非常に後悔しています。図根三角点同士のトラバース 測量をやったと自慢気に話ておりますが実はその測量について、どんな測量であったかと申し ますと、折角図根三角点からトラバース測量を行ないながら実際にデータとして利用していた のは『水平角』と『水平距離』だけでした。 後々、後悔のないように、公にだしても恥ずかしくない座標にするよう一生懸命努力したつもり だったんです。 後から自分のやった現場に測量会社や他の調査士さんが入っても、何も言われないように努 力していたつもりなんですが、どうも本当の測量ではなかったと気がついたんです。 私はこんな偉そうに言っておりますが、測量については全くのペーパー測量士補でして、測量 の勉強をしたのが3ヶ月ほど本を読んだだけの事しかやっていないんです。もちろん合格さえ すれば良いという勉強方法でしたから、難しい事は後回しで、最後にはあきらめて切り捨てる。 という事になり、わかりやすい事だけを覚えたので、どうも生半可な知識のまま測量を行ってい た様なのです。 ●やり直し やっと最近になって、測量の事を本格的に勉強する機会を得まして測量の基本、『基準点』と は何かという事を教えていただいたんです。 恥ずかしながら、その時、光波測距儀に簡単に入力出来る気温、気圧はその入力方法さえ知 らなかったという状態でした。当然、各種の補正という事さえ知りませんでした。 私は自分の業務を行う主な地域では、依頼があれば100メートル以内には自分の作成したト ラバース点があるといった状態であったんですが、現在再度基準点と呼べるように観測をやり 直している状態です。 だからこれからトラバース測量をやってみようという気持ち、いや、絶対やっていただかなけれ ばならないのですが、そういう人達には、こんな無駄をしてもらいたくない。最初から正規の方 法で測量をしていただきたいんです。 ●公共座標 正規の方法とは、位置を決定するために一番良い方法という事でもあります。 「測量とは地球上の相対的な位置を測っているのだ」と言うのがありました。測量の基本です。 何も考える必要は無いのです、基本どおり測量すれば良い訳です。我々に関係する規程が建 設省公共測量作業規程であり、相対的な位置を表わすものが公共座標値なのです。 それでは、ある基準点の公共座標値といわれるものはどうやって決定されているのでしょう か。 当然、日本全国には国土地理院が作製した一、二、三等三角点があり、これは基本三角点 と呼ばれております。 同じく国土地理院が国土調査のために作製した四等三角点、これは基準三角点と呼ばれて おり、また基本三角点を使用して都市基準点として1級基準点等が作製されております。 これらの基本三角点や基準三角点から2級そして3級基準点という風に作製されていく訳で すが、これらはむやみやたら作製されている訳ではなく、建設省公共測量作業規程にしたがっ て作成されている訳です。 一方、我々が1筆地を復元するために必要な地籍調査の図根多角点も公共座標値を持って います。これは地籍調査作業規程準則に従って測量されています。現在これも建設省公共測 量作業規程に準ずる方向になりつつあります。 したがって将来的に調査士業務上で使える精度の基準点は、建設省公共作業規程による4級 基準点(大体50メートルに1個の設置基準)と言う事になります。 そうすると当然、我々調査士も1筆地を測るためには4級基準点程度は作製出来なければ なりません。 調査士の測量等と言わずに、正式なやり方を学ぶために一度、建設省公共測量作業規程を 読んでみて下さい。解説本もあり、それ程難しくはないはずです。将来に向かって「調査士の測 量」から脱却しましょう。 そして、少し頑張って3級基準点(200mに1個)に挑戦してみて下さい。基準点は自分で作れ るものだったのかという実感が湧いてくると思います。 ●図根三角点 また、正確に言えば図根三角点を与点として使用する事は、建設省公共作業規程では許され ておりませんが、折角、国土調査事業でそれなりの基準で設置し、きっちりした標石等を設置 しているわけですから、この図根三角点を使用しない手はありません。自分の3級基準点測量 の練習台としてどしどし利用し、その結果も使用してください。 該当の基準点の精度には外れてしまうかもしれませんが(水平位置は大体良いようですが、高 さが残念ながら制限からはずれる場合が多いようです。)「国土調査の成果も案外いいな。」と か、「俺の測量の腕も満更ではないな。」といった風に、その地方の国土調査の精度や自分の 測量の腕もわかってきますし、これによって新設した基準点は惜しくも制限内に入らなくても、 図根多角点よりも遥かに精度がいいものと言えます。 ただ、ぜんぜん制限から飛びだしてしまっているものは、与点となった図根三角点か、自身の 測量のミスですので取り扱いに注意して下さい。 ●やる気 「やってみたいけど、どうすればいいんだ。俺には知識も補助者も測量器材もパソコンのソフ トも無いんだ」これで意欲も無ければどうしようもありません。 知識については、現在、基準点測量について各地で活発に研修が行われておりそれに積極 的に参加される事をまずお薦めします。 人員についても、それは3人程度の知識のある人間が揃えば問題は無いと思われますが、 多少時間はかかっても自分一人で行なう事は十分可能です。 また、測量器械も1筆地を測る道具でも可能ですが、トータルステイションがあれば更に条件 が良くなるでしょう。 要は「やる気」の一言に尽きます。 では、1筆地を測る測量と基準点測量との違いというのは何か、各種の補正です、温度や気圧 の変化に対応する気象補正。現在はこまめに気温、気圧を観測して単純に光波測距儀にそ の値を入力してやる事で自動的に補正してくれます。 便利な事に腕時計にも気温、気圧が観測出来るものがあります。 観測の前に必ず気温と気圧を入力する事を習慣づければ簡単な事です。 後の補正は傾斜・投影・球面補正等です、そんなに難しい計算では有りません。器械の高 さ、反射板の高さ、鉛直角の観測、斜距離の観測。それだけを今までの水平距離と水平角の 観測から変更すれば良いのです。 ここまでしておけば、本来厳密網計算のソフトが無くても、補正した距離の値をご自分の測量 ソフトで計算されてもそれは十分使用に耐えるはずです。 要は、「やる気」なのです、理論を学ばれたら実際にやってみる。それが大事なのです。 ●どの点から復元するか よくご質問を受ける事に、どの点から17条地図上の境界点を復元し、立会して確定したらどの 点から観測し、どの値を使用するかという事です。 原則的には国土調査実施地域の場合、その境界を測った図根多角点から復元するのが原 則である。 しかし、それとても図解法での国土調査であれば20センチ程度の位置誤差は十分考えられ ます。 復元をしたら当然そのままで良いわけではありません。本来の境界の位置を確認するために 土地所有者の立会いの後、境界が確定される訳で、これが位置誤差の範囲であれば、確定さ れた境界で誤りがないとしてその位置に杭等の不動標識を設置して境界位置を表示するわけ です。 ●境界の座標を決める点 確定した境界をどの座標値で表さなければならないかというもう一つの問題があります。 国土調査の図根多角点から復元したが、あまりこの図根多角点は精度が良くない、このまま 使用すると実際の面積よりも歪みが大きそうだという事は十分考えられます。復元については 国土調査時の復元ですから何等問題はありませんが、後で商取り引きの対象になる事が当然 解っておりますので、登記簿の面積はきっちり出さなければならない。当然将来の復元の問題 も出てきます。 そうすると当然1筆地に歪みを与えない程度の精度の良い基準点から確定した境界を測り、 面積を測定すれば、境界の表示、面積の数値には問題ありません。 原則的には、最初の境界の復元は近くの図根多角点から、確定測量は精度のよい基準点 からと言う事になりますが何か非常に面倒に思えます。 ここで少し頭を切り替えてみると、図根多角点から境界を復元しても立会いにより多少移動し ます。これを精度の良い基準点から行なえばどうなるか。図根多角点は当然、図根三角点か ら測量をし、図根三角点は国の作製した三角点から測量してあります。 建設省公共測量作業規程によって作成された基準点は国の三角点から順次2、3、4級と作 製しますので、国土調査と過程はほぼ同一であり、それよりも遥かに精度が良いはずで、した がって直接基準点から復元を行なっても十分許容誤差範囲に入ると思われ、こうすれば繁雑 な手続きの必要が無く基準点だけを使用する事で解決出来ます。 ●GPS購入 随分と話が飛んでしまうのですが、基準点については最近GPS測量が注目されて来ておりま す。 現在私を含めて5人のグループで、基準点測量の重要性を考え、2級基準点測量(500m間 隔)の実技や理論の研修から始まって、全員が協力してトータルステイションで基準点を作成し て来て、どんどん基準点を作ろう、基準点を作成出来る技術を磨こうという訳でいろいろやった んですが、我々の技術もなかなか向上しないし、ある特定の地域に2級基準点を作るとした ら、与点の三角点を含む広範囲の測量になってしまう。 そこで、何とか効率の良い方法は何かないかといろいろ話をしている段階でGPSはどうかとい う事になり、丁度GPSも価格がかなり安くなりましたので、購入してみよう。利益をあげなくても いいじゃないか、5年程度の償却と考えれば高くない。とにかくノウハウを知りたいという事で購 入し、活動しているんですが、非常に効率がいいんです。 GPSについては残念ながら皆さんに講義出来る程詳しくありませんが、実際に操作し、基準点 を作製した経験から申し上げますと、非常に簡単に基準点が作製出来るというのが実感があ ります。 当然、その前に観測計画、解析等いろいろ知識の必要な事は言うまでもありませんが、必要 な場所に基準点を作るという事に関しては予算さえ確保出来れば、飛躍的に進むであろうと予 想されます。 極端に言えば、基準点のあまり必要でない山間部は後回しにして、都市部にどんどん基準点 を作製すると言った事は可能です。 公図地域においても、どんどん基準点が設置されると思われます。 精度の良い基準点はなにも登記だけに使用する訳ではなく、都市利用計画や工事測量と非 常に用途が広くなり、公図地区、国土調査地区にかかわらず設置されていくでしょう。 あなたの町でもGPSで基準点が身近に設置されれば、測量会社は直にその基準点を使用 し始めるでしょう。測量会社にとっては非常に楽になるからです。 ●実地調査 現実には上空の視界等いろいろ克服しなければならない問題もありますが、法務局の実地 調査にしても、二周波のGPSを使用すれば、GPSの固定局と現地調査用のGPSを使用して 現地の公共座標を簡単に知る事が出来るようになります。 法務局は測量のための要員を育成する必要も無く、ただ単にGPSの受信アンテナをまっす ぐ持っていれば良いのです。 当然そうなれば、任意座標で提出していれば、比較が難しいため地積測量図は全て公共座 標で表示して下さい。与点となった基準点の位置・名称・座標を記載して下さいと言う事になる でしょう。 そうなった時「そんなの望むところよ。」とおっしゃる調査士さんが多い事を期待しますが実際 そうなると何人の方が対応出来るでしょうか。 GPSによる位置の特定は正確で有り、地球を測るという測量の本来の観点から全て補正を された値となっております。 当然、地積測量図に記載される値は補正を行ない、基準点を使用した本来の公共座標が要 求されて来ます。 ●そして調査士 官庁がどんどん基準点を設置し、それを使用して用地測量を行わせ登記測量も行なう、法務 局がGPSで実地調査を行なう。「そんな事あるもんか、俺が仕事している間はないよ」と思わ れる調査士さんは多いかもしれません。 だが、いつ私が言った事が現実になるかわからないのです。 高次の基準点は簡単に作製出来るようになっているのです。 GPS等で2級基準点が設置されても、それを現場へ、そして自分の業務へと接続するための 技術がない調査士が取り残されようとしているのです。 それなら、すべてGPSで1筆地まで測量すれば良いと考えられるかもしれません。 しかしGPSは万能ではありません。 法務局の実地調査であれば2、3点を確認すれば良い訳ですが、我々の1筆地測量では、全 点がGPSで観測出来ないと意味を持たないでしょう。「ここは、GPSで観測出来ませんので測 量は出来ません」とはとても言えないし、そんな調査士にはなりたくないでしょう。 当然、トータルステイションとGPSの併用が求められ、GPSの観測と同様な結果になるようト ータルステイションの使用の技術と知識が求められます。 そういった事を克服出来る技術そして知識とは、基準点測量に他なりません。 いま、危機感を持ってこの技術や知識を取得しないと、一人の調査士がついて行けないので は無く、社会全体から調査士不要論が沸き上がっても不思議では有りません。
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