スライド量

●読み取り値
  図解法による国土調査による成果である法17条地図については、法務局備え付けの法17
 条地図をトレースして、正確には図面の外枠の図郭線が交差する点の座標値または対象の
 1筆地の近隣のトンボ(区郭交差記号)からその1筆地の境界(屈曲点)の位置についての座
 標値を読み取る事が出来ます。
  市町村役場においても、既にデジタライザー等で読み取りを行い、その座標値を管理して
 いる所も有ります。
  この場合は、読み取る必要も無く、その値を閲覧し、使用されることになんら支障が有りま
 せん。
  ただ、ここで注意しなければならないことは、この値は一度、平板の原図にプロットした後、
 その位置を読み取った値、つまり読み取りの値であるという事で、数値測量での現地の境界
 を現す数値では無い事に注意すべきです。



●既存の図根多角点

  国土調査においては、当然その1筆地を測った図根多角点から観測、現在の1筆地の形状
 が作製されております。
  当然の様に、この図根多角点は、図根三角点から単路線等により1次のトラバー測量をさ
 れ、その作製された図根多角点を基にして、2次、そして更に3次といったように、図根多角点
 は作製され、その位置は総て、座標値を持っております。
 
  平板の原図には、まずその図根多角点の位置をプロットされ、その原図を現地の図根多
 角点の上に設置して、放射法等で、テープ、検縄等で境界を観測し、その形状を作製し、1筆
 地を測り、その位置を原図にプロットする事により、図面上で、その位置の座標値が分かる
 事になります。
  かし、この値は数値測量で得たものでは無く、今度その図面を基に現地を復元する時に
 は、プロットする時の誤差。読み取る時の誤差。観測時の誤差が含まれた値である事を頭に
 入れておかなければなりません。



●図根多角点の亡失

  当然、この1筆地を測った、図根多角点が残っていれば(観測点、後視点の2点は最低必要
ですが)、その図根多角点の位置が原図に正しくプロットさえしてあれば、この1筆地の境界に
ついても、ほぼ正しい座標値を知る事が出来ますが、本当にドンピシヤ。今で言う1センチ内外
といった事は期待出来ません。
 それこそ公差の早見表にあるような公差の中にはなんとか入ってきます。
 これはこれで良い訳ですっ 時代がそれを要求しなかったのである。いや出来なかったと言
った方が正しいかもしれません。図解法自体の限界も知る必要があるでしょう。
 だが、この図根多角点も時代の経過とともに、亡失が進み、やがて殆ど無くなる。観測点は
残っているが、後視点は無くなった。また両方とも無くなったりして、近傍の図根多角点からの
処理を行うようになる。
 最初に述べた、1次の路線同士の図根多角点を使用して、それなりのトラバー測量を行え
ば、精度的にはそれなりのものになるが、2次や3次の違った路線同士の図根多角点を使用し
てトラバー測量を行えば、現実的に使用して良いのかどうか迷うような精度になる。
 いずれにしても、最初に存在した図根多角点と同等程度(良いか悪いかは別として)のもの
が作製出来たかどうかは怪しくなる訳です。



●新設の多角点(基準点)

 こういった事から、満足な精度を得ようとした場合や、大規模な用地測量になると、最低で
も図根三角点を使用して、この事業の為に新設の多角点(基準点)を作製する事になる。
 図根三角点を使用すれば、大体5000分の1程度の精度は得る事が出来ますので、一般の測
量であればこれで充分と考えられます。
 当然、この場合、国土調査と同様の路線を組み、ほぼその通りの測量をする事はまず有り
ません。
 その事業に便利な様に、更に精度が良い様に。国土調査時より、より精密な器械を駆使して
新設の公共座標を持った多角点(基準点)を作製する訳です。



●考え方

  現地に新設の多角点(基準点)が作製され、そして、1筆地の境界については、先程の要領
で法17条地図からの図郭枠またはトンボから公共座標値として読み取りがなされます。
 ここで、新設の多角点 〈基準点)と読み取り値の関係は、公共座標という共通の土俵に上
がり、あたかも同一の座標系であると考える事になります。
 そして当然のように、新設の多角点〈基準点)と境界を現す読み取りの座標値の関係につい
ては、国土調査の時に1筆地を測った図根多角点と1筆地の読み取り値と同等の関係であると
考えてしまいます。
 国土調査地区については、土地の配列については、縮尺どおり整然と記載されており、隣接
の土地との相関関係は明確です。
 更に新規の事業の為に新設の図根多角点(基準点)が設置されれば、大体どこを通過する
かは簡単に分かり。更に1筆地についても原図から読み取りを行えば、買収にかかる土地の
位置は簡単に分かります。
 ここで、先程の国土調査時の1筆地を測った図根多角点と1筆地の境界の関係が頭をもたげ
る事になります。
 この程度の誤差ならば、当然公差の範囲である。もし、多少違っていても許される誤差(反対
に、この読み取りの値は絶対変えてはならない値なのだと思っているのかもしれませんが。)。
このままやってしまえ。
 実際の境界の位置とは多少のずれがある事を承知しながら、新設の多角点(基準点)の値
を使用し、境界については読み取り値を使用して地積測量図を作製し、分筆登記を行う。
 ここに大きな落とし穴が待っています。



●復元

  我々土地家屋調査士は、国土調査地区の場合、必ず復元という事をやかましく指導され
ています。これは、国土調査の法17条地図と現地の関係が正確であるかどうか、更には、本
来の境界であるかどうかの確認でもあるのです。
 そのため、現地において新設の多角点から1筆地の読み取り値を使用し、逆打ちにより現地
に仮杭等明確に利害関係者に分かるようにしてあげる事により、依頼人、隣接土地所有者の
思っている境界と相違がないか、その意志表示を明確にさせ、双方に思い違いのないようにす
るためです。
 ところが、この復元をやりますと、どうしても2、30センチずれて来ます。
ひどい場合には1メートル近くずれて来ます。
 このずれについては、境界の明確な場所で復元をいたしますと、ある規則性を持っている事
が簡単に解り、どの方向にどの程度ずれているという事も解ってきます。これをここではスライ
ド量と呼びます。





 当然、現地では、このずれがあるまま境界が確定出来る訳はありません。現地の明確な構
造物の境界位置もしくは双方の主張が一致する位置へずらした分だけ、すべての読み取り境
界位置を復元後同様にずらしてやります。
 当然全部が全部同一の距離では有りませんので、ある程度現地の構造物等を考慮しながら
位置を決定していく事になります。



●位置の相違

 この位置の確定を行う時に、公差の範囲という事も考えなくてはなりません。
 これを超えてしまえば当然地図訂正という事になります。
  しかし、このスライド量については、公差という事を考える必要は無いと思われます。何故な
 ら1筆地全部がある一定方向に、ほぼ同一距離だけ動くのですから。これは通常、言われて
 いる辺長や位置誤差という事とは別の問題です。
  スライド量を修正した結果について、辺長や位置誤差を考えるべきだと思われます。



●何故スライドが生じるのか

  それでは、何故このようなスライドが起こるのでしょうか。当然、新しく図根多角点を作製す
 る場合、より精度のいいものを求める訳でもあり、使用器械も良くなり、測量方法も相違して
 きます。
  同一の図根三角点を使用して測量をしていれば、図根多角点(基準点)の値はほとんど結
 果は同じではないかと考えられるかもしれませんが、その測量方法により随分と値は相違し
 てきます。
  わざわざ昔の精度の悪い測量と同様な事をする事はまず考えられません。
  そうすると、仮に同一の位置の図根多角点をそれぞれに観測した場合、その方法や条件
 等の相違から、その位置を表わす座標値は相違する事になります、この事がスライドが発生
 する理由と考えられます。
  当然の様に、与点がしっかりしている図根三角点の近辺では、そのスライド量は少なく、図
 根三角点から遠く離れて、本来この当たりに図根三角点が無ければならないのにと思われ
 るような場所では、そのスライド量は多くなっていきます。
  このスライド量を明確に知りたいのなら、新設の多角点から、残された国土調査の図根多
 角点を観測して、観測された座標値と国土調査の成果の値を比較すれば、簡単に知る事が
 出来ます。



●座標値のずれ

  ここで先程述べた様に、新設の多角点と1筆地の読み取り値について、なにもスライド量を
 補正せず、そのままの関係で地積測量図を作製、分筆してしまうと、このスライド量と元々の
 境界とのずれの両方を含んだままになります。
  当然、これで地積測量図を作製し、登記が完了すれば、この座標値だけが一人歩きしてし
 まいます。
  地積測量図の境界の座標値は、実際に境界の確認が完了し、測量がなされているという
 事です。既に読み取りの値という事では無くなっている訳です。
  新設の多角点(基準点)から、その座標値で復元してみると、境界と思われる場所では無
 く、とんでもない位置に来ます。
  これは通常の誤差と、単純なスライド量を含んで相違する事になります。これは国土調査
 の成果だけが悪いのではありません。スライド量を修正するのは測量者・調査者の責任と言
 えます。
  最初に、法17条地図からの復元であれば乙1で許されている誤差についても、このように一
 度地積測量図を作製し、登記が出来てしまうと、現在であれば甲2程度の誤差しか許されな
 い事になり、買収された残地を今度、個人が再度分筆を行う時に、既に提出された地積測量
 図のせいで、分筆が出来ない、分筆をする為には買収の為に既に登記所に提出された地積
 測量図を訂正しなければならなくなる。
  その地積測量図も、路線で測量をしている場合、1つ訂正すると全部訂正しなくてはならなく
 なる場合もあります。
  そうなると本来の登記以上の労力と費用を使う事になり、土地の提供に快く応じてくれた土
 地所有者に多大の迷惑をかける事になります。
  こういった事は、最初に買収の為の分筆登記を行う際にちょっとした手間をかければ防ぐ
 事が出来ます。当然それなりの予算化は必要ですが、後日のいろいろと発生する問題の解
 決のための費用やそれに伴う手間暇を考えれば、どちらが良いかおのずと明白になるでしょ
 う。



国土調査地区の話
     
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